フィクション
2024年7月に発売されたエチオピア系アメリカ人作家のディナウ・メンゲストゥによる『Someone Like Us』は、アメリカにおける移民の経験を掘り下げた小説である。 主人公はパリに住むジャーナリスト、マムッシュである。彼はかつては有望なキャリアを持ってい…
2023年2月に発売されたマーティン・マッキネスの『In Ascension』は、気候変動が進行する中でオランダで育ったリー・ハーセンボッシュという女性を主人公にした物語である。幼い頃、リーは家庭環境の困難さから逃れるために、近所の水辺によく足を運んでいた…
2024年7月9日に発売されたアイシェギュル・サヴァシュによる『The Anthropologists』(人類学者たち)は、アシャとマヌという若いカップルが、名前のない外国の都市でアパートを探しながら、自分たちの未来を思い描く様子を描写している。2人は人生において…
今回は2024年に韓国の李箱文学賞を受賞した、チョ・ギョナン*1作『일러두기』*2を取り上げる。 主人公のジェソは離婚後、職を辞めて彷徨った末、大都市の外れにある街で、父親から押し付けられる形でコピーショップを経営することになる。もう1人の登場人物…
2024年10月1日に発売されたルイーズ・アードリックの小説『The Mighty Red』は、ノースダコタ州とカナダの国境付近、レッドリバーバレーの農業コミュニティを舞台にした作品である。物語の背景には、2008年の金融危機という現実の厳しさが重ねられ、経済的困…
今回は、韓国で最も権威ある文学賞の一つである李箱文学賞の2023年第46回大賞受賞作を取り上げたい。チェ・ジニョン作『ホーム・スイート・ホーム』は、がんを患い余命わずかな語り手が、最期を迎える理想の「家」を廃屋から作り上げていく過程を通じて、人…
2024年9月24日に発売されたサリー・ルーニーの『Intermezzo』は、アン・ポスト・アイルランド図書賞やバーンズ・アンド・ノーブルの年間ベスト本候補にもノミネートされた小説である。 主人公ピーターと弟イワンは、父親の死という喪失を経験し、それぞれ異…
2024年7月に発売されたマルティーナ・ヘフターによる『Hey guten Morgen, wie geht es dir?』(英訳:Hey, Good Morning, How Are You?)は、2024年ドイツ書籍賞を受賞した長編小説である。 この物語は、50代のパフォーマンスアーティスト・ユノを中心に展開…
2024年6月4日に発売されたエッシー・チェンバーズの『Swift River』は、アメリカの大手書店チェーンであるバーンズ&ノーブルによる2024年ディスカバー賞を受賞した作品である。本作は、歴史的に人種差別が根深いニューイングランドの架空の小さな町「スウィ…
2024年8月に発売された『跑去她的世界』(彼女の世界へ駆ける)は、四川省出身1991年生まれのSF作家・夏桑による初の長編小説である。夏桑は現在、成都に在住している。物語の主人公は、負傷したマラソンランナーであり、彼が走るたびに亡き妻の姿を見るとい…
2024年ピューリッツァー賞戯曲部門を受賞したエボニー・ブースの『Primary Trust』は、2023年5月から7月までオフブロードウェイで初演された作品である。主演はウィリアム・ジャクソン・ハーパー、演出はクヌート・アダムスが手がけ、批評家からも高い評価を…
2023年9月19日に発売されたジェイン・アン・フィリップスの小説『Night Watch』は、南北戦争直後のウェストバージニア州を舞台に、戦争が残した深い傷跡と人々がどのように向き合っていくかを鮮やかに描いた作品であり、2024年ピューリッツァー賞フィクショ…
2024年8月6日に発売されたサム・サックスの『Yr Dead』は、ユダヤ系でクイアの主人公エズラの視点で語られる、クイアとディアスボラの成長物語である。エズラは2016年、トランプタワー前で抗議のために焼身自殺を遂げ、その短い人生に幕を下ろす。この小説は…
2024年5月14日に発売されたミランダ・ジュライの『All Fours』は、ロサンゼルスに住む女性アーティストが、結婚生活や母性における停滞感から抜け出そうとする物語である。この小説は、40代女性が結婚、母性、更年期、そしてセクシュアリティに向き合う赤裸…
2024年5月7日に発売されたナイジェリア出身の小説家 ペミ・アグダによる『Ghostroots』は、12の短編からなる短編集である。どの物語でも、登場人物たちは先祖とのつながりからの自由を求め、葛藤する姿が描かれている。舞台はすべてナイジェリアの首都ラゴス…
ビル・ゲイツが投稿した2024年夏の推薦読書・ドラマリストに挙げられている『The Woman』はクリスティン・ハンナによるベトナム戦争の時代の従軍看護師を主人公にした歴史小説である。 主人公は若い女性 フランシス・マクグラス(通称フランキー)。物語は19…
バラク・オバマ前大統領による2024年夏のリーディングリストに挙げられていたアデル・ウォルドマンの小説『Help Wanted』は、コストコに似た大型量販店を舞台に、そこで働く従業員の物語を描いている。 舞台となる量販店は、最初にショッピングモールによっ…
バラク・オバマ前大統領による2024年夏のリーディングリストで取り上げられた『Beautiful Days』はザック・ウィリアムズのデビュー短編集である。本作は親であること、死、現代社会における不安、現実と非現実の境界線を探求する、不穏でシュールな10編の物…
バラク・オバマ前大統領による2024年夏のリーディングリストに挙げられている『The Ministry of Time』はカリアン・ブラッドリーによるデビュー作である。この作品を短い言葉で表現するなら“タイムトラベルを題材にしたSF“と言えるだろう。しかしこの小説は…
バラク・オバマ前大統領が2024年夏のリーディングリストに選んだリサ・コーの著書『Memory Piece』は、3人の女性の数十年にわたる友情の浮き沈みを描いている。物語は友情、恋愛、ジェントリフィケーション(都市の高級化)、資本主義、ドットコムブームとそ…
バラク・オバマ前大統領の2024年夏リーディングリストに挙げられている『Martyr!』は、詩人としても知られるカヴェ・アクバルによる2024年のデビュー小説である。この小説はアルコール依存症の主人公が殉教者(Martyr)についての本を執筆する中での心情を描…
バラク・オバマ前大統領が2024年夏のリーディングリストに挙げているマリリン・ロビンソン著『Reading Genesis』*1は旧約聖書巻頭の書である創世記に文学的な観点からアプローチした意欲作である。著者は小説『ギレアド』で2005年のピューリッツァー賞フィク…
2024年7月に発売されたリズ・ムーアの最新作『The God of the Woods』は、1975年のアディロンダック山脈を舞台に、階級、家族の秘密をテーマにした心理サスペンス小説である。 物語は、裕福なヴァン・ラー家が経営するサマーキャンプ、キャンプ・エマーソン…
2023年6月に英訳され、2024年国際ブッカー賞を受賞したジェニー・エルペンベックの最新作『Kairos』は、1980年代末の東ベルリンを舞台に、19歳の学生カタリーナと53歳の作家ハンスの恋愛関係を描いた小説である。しかし、この作品は単なる恋愛小説にとどまら…
2024年3月に発売されたリタ・ブルウィンケルの小説『Headshot』は、女性の身体性と競技スポーツの世界を鮮烈に描き出した意欲作である。舞台となるのは、ネバダ州リノで開催される18歳以下の女子を対象にしたボクシングの全米大会。8人の10代の女子ボクサー…
ヒシャーム・マタールの小説『My Friends』は、政治的激動と個人の運命が交錯する現代社会の縮図を、3人のリビア人男性の友情を通して描き出した傑作である。1984年のロンドンでの銃撃事件から2011年のアラブの春を経て現在に至るまでの約40年間を舞台に、亡…
2023年10月に発売されたシャーロット・ウッドの最新作『Stone Yard Devotional』は、静謐さと内省的な深みを兼ね備えた傑作である。この小説は、現代社会の喧騒から逃れ、オーストラリアの田舎にある修道院に身を寄せた一人の女性の物語を通じて、信仰、共同…
2024年9月に発売されるリチャード・パワーズの新作『Playground』は、テクノロジーと自然環境の関係性を巧みに描き出した壮大な物語である。パワーズは、一見無関係に見える登場人物たちの人生を通して、現代社会が直面する重要な問題を浮き彫りにしている。…
2023年11月に出版されたサマンサ・ハーベイの最新作『Orbital』は、宇宙という極限の環境を舞台に、人間の本質と地球との関係性を探求する小説である。国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する6人の宇宙飛行士の1日を描いたこの作品は、科学的な正確さと文学…
2024年5月に出版された『The Safekeep』は、ヤエル・ファン・デル・ウォウデン(Yael van der Wouden)による印象的なデビュー作である。第二次世界大戦後のオランダの田舎を舞台に、複雑な人間関係と歴史の重みを巧みに描き出した作品だ。この小説は、主人…